ふぁ~むつばさ ~乳クリエイターのお仕事~

鮫川村に、若い酪農家さんがいると聞き、取材してきました。

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ふぁ~むつばさ 乳クリエイター 清水大翼(しみず だいすけ)さんです。

いただいた名刺に書かれていた肩書きが、“乳(ちち)クリエイター”。

えっ、乳クリエイターって?と聞きたい気持ちは抑えて、

まずは、清水さんのお仕事のご紹介からしましょう。

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酪農を始めてから4年目となる、ふぁ~む つばさ。

仔牛を含めてジャージー牛を27頭ほど飼っています。

清水さんの1日は、こんな流れのようです。

朝5時 起床、搾乳

朝8時 集乳車による牛乳の集乳

午前中 仔牛へ哺乳、牛舎の掃除、エサやり、育成牛の世話

お昼 昼食、少し休憩

夕方 搾乳、哺乳、エサやり

 

清水さんの牛へのまなざしはとても優しく、家族を見るまなざしに近いと感じます。

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清水さんの年齢は、現在、27歳。鮫川村で生まれ育ち、神奈川県の動物応用科学科のある大学に入り、その後2年間、北海道の牧場での研修を経て、鮫川村に戻ってご自身で牧場を立ち上げました。

田舎で生まれ育ち、一度都会に出た人たちがそのまま都会に就職するという流れが多い中、清水さんは、大学時代から、鮫川村に戻るんだと思っていたそうです。

「4年間神奈川県に住んで、住むところではないと思いましたね。僕はおばあちゃんの家が東京にあって、お盆や正月は東京に帰っていたんですよ。だからもとから都会に対する憧れはなくて、ちょっと遊びに行く場所ぐらいに感じていました。大学1年生の頃から、鮫川村に戻ったら何をしようと、意識していましたよ。鮫川村が好きですしね。」

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鮫川村で何をするか。と考えたとき、自分には酪農が合うかなぁと思ったそうです。

そのきっかけは何だったのでしょうか。

「僕が中学3年生の卒業あたりに、『馬を飼わないか』。と、家畜商の人がうちにやってきたんですね。『大きいから飼えない』。と親が言ったんですけど、『じゃあ見るだけでも』。と見に行ったら、『目が合ってしまったから』。と言って、結局馬を飼いだしたんです。また僕が高校に入った春に、家畜商の人が次はジャージー牛を連れてきてしまった。で、また目が合ったと言って、ジャージー牛を飼い始めたんです。それで、その牛が来たときにはすでに妊娠していて、仔牛を産んでしまって、そのまま乳しぼりをするようになった。高校生の頃は、犬の散歩感覚で、牛の搾乳をしていた記憶ですね。」

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大学2年生のときの夏休みの実習で、自分がこれまで“犬の散歩”ぐらいに思っていたことが、きちんとした仕事だったと、初めて認識したそうです。

鮫川村に戻ってから、林だった場所を3年かけて切り開き、牛乳を無事に出荷してから、ようやく1年が立ちました。

ただし今は、福島県酪農組合に出荷しているだけなので、“ふぁ~むつばさ”の牛乳として販売できていないのが現状です。清水さんは将来の展望をこう語ります。

「いつかは、ここでソフトクリームの原料を作って、どこかの施設で売ってもらえるようになりたいです。あと、観光牧場まではいかないけど、牛が外に出て、皆が訪れやすい牧場にしたいと思っています。誰でも来れて、『牛って可愛いな』。『うわっこんなに臭いんだ』。とか、思ってもらいたいですね。」

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牛と訪れた人が触れあえる牧場にしたいという、清水さんの夢。でもそれには、立ちふさがる大きな壁があります。

「本当は放牧したいんですけど、震災の影響でできないんです。」

福島県では現在、酪農で放牧しているところはまだないのだそうです。

その理由は、肉牛の場合はまだ出荷前に肉にして検査して大丈夫だったら出せるけれど、乳牛の場合は、搾乳してからすぐ出荷なので、検査している時間がないからだそうです。だから、未だに放牧することはできないし、福島県外の牧草や、基準がクリアした牧草をあげているとのこと。

「放牧ができないことが、牛にとっても、自分にとっても、ストレスになっていますよね。」

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夏でも、牛たちは外で自由に過ごすことはできず、1日中牛舎の中で干し草を食べて過ごします。

そんな状況であるのにも関わらず、東日本大震災後に、鮫川村に戻ってきた清水さん。

「北海道の皆にも、『状況が悪いだろうし、無理して福島県に戻らなくても、北海道でもこんなに土地が余っているのに。ずっと北海道にいたら』。と言われたんですけど、帰って駄目なら、またどこかで出来るだろう。とりあえず帰ろう。と思って、帰ってきました。幸い、鮫川村は、出荷停止になるほどの被害でもなかったので。」

現状は厳しいかもしれませんが、1日でもはやく、放射能のことを心配せずに、牛たちが外でのびのびと過ごせる日が来ることを願います。

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そして最後に、取材の最初から気になっていたことを質問してみました。

乳クリエイターって、何ですか?

「僕は、仕事でも、仕事以外でも、いろんな人と知り合って、繋がっていくのが好きなんですけど、たまたま知り合った酪農家の方に、“乳クリエイター”と名乗っている人がいて、あ、それ面白いなって。ハイパーメディアクリエイターがあるように、クリエイターって、何でもいいじゃないですか。」

と、さわやかな笑顔と共に、そんな返事が返ってきました。

 

心から牛を愛していて、心から仕事を好きで、心から今後のことを楽しみにしている。

そんな前向きで明るい清水さんと、牛たちの取材ができました。

 

いつか、牛たちがのびのびと外で過ごす牧場となった“ふぁ~むつばさ”に遊びに行ける日を、楽しみにしています。

 

 

写真:青砥、稲葉  文:稲葉

 

 

データ

ふぁ~む つばさ
〒963-8403 福島県東白川郡鮫川村葉貫13-2
TEL  0247-49-3344  FAX 0247-49-3366
HP  www.facebook.com/daisuke.s.0127/

 

 

2015-11-05 | Posted in Blog, 生産者紹介 

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